ADR(米国預託証券)とは——配当から引かれる管理費用と、本国の税率(英国は源泉なし・中国は10%)で変わる手取り
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ADRとは
米国市場には、米国企業ではない会社の株が「ADR(American Depositary Receipt)」という形で上場しています。アリババ、台湾セミコンダクター(TSMC)、トヨタなどがそうです。仕組みは、
- 米国の預託銀行が本国の株式を預かる
- それを裏付けに、米国市場で取引できる証券を発行する
- 投資家はドルで売買し、配当もドルで受け取る
楽天証券では中国19・英国10・インド10・ブラジル10銘柄など、約100銘柄のADRを扱っています(取扱は変更されることがあります)。売買の手数料は通常の米国株と同じです。
よくあるつまずき ADRの配当明細を見ると、米国株と違う税率で引かれていて、さらに数セントの「管理費用」が差し引かれている。米国株と同じつもりで買うと、この2つで手取りが想定とずれます。
違い1:管理費用(DR fee)
楽天証券の手数料ページには、
配当支払時に、1株あたり0.25〜5セント程度の管理費用を、配当金から差し引かせていただきます
とあり、加えて「預託証券発行の金融機関(信託銀行等)により、一定期間ごとに管理費用が徴収される場合があります」と書かれています。
100株持っていて1株あたり2セントなら、配当のたびに2ドル。少額ですが、無配の銘柄で預託銀行が定期徴収する場合は口座の米ドル残高から引かれることになり、ドル残高が足りないと不足金になる可能性があります(楽天証券の信用取引ルールには費用徴収による不足金の記載があります。現物口座での徴収の扱いは公式に明文が見当たらないため、配当明細と預り金の動きで確認してください)。
違い2:配当の源泉税は「本国の税率」
米国株の配当は米国で10%(日米租税条約)が引かれますが、ADRは違います。楽天証券の説明では、
米国では非課税となるものの、配当が支払われる本国での課税分が源泉徴収されます(税率は現地の税法による)
つまり、ADRの発行元の国の税率です。例を挙げると(楽天証券は国別一覧を公表していないため、一般的な税制の情報です):
| 本国 | 配当の源泉税 |
|---|---|
| 英国 | 原則なし(配当に源泉徴収の義務がない) |
| 中国 | 10%(H株等) |
| インド | 10%(2020年4月以降、日印租税条約) |
その後、日本で20.315%がかかるのは米国株と同じです。租税条約があれば、確定申告で外国税額控除を受けられます。英国ADRのように源泉税がない場合は、二重課税が起きないので控除の対象もありません。
手取りの比較(配当100ドルの場合)
| 米国株 | 英国ADR | 中国ADR | |
|---|---|---|---|
| 本国の源泉税 | 10ドル | 0ドル | 10ドル |
| 管理費用(例:100株×2セント) | 0 | 2ドル | 2ドル |
| 日本の課税(20.315%) | 約18.3ドル | 約19.9ドル | 約17.9ドル |
| 手取り(概算) | 約71.7ドル | 約78.1ドル | 約70.1ドル |
※管理費用の課税上の扱いは簡略化しています。実際の金額は配当明細で確認してください。
楽天証券での確認場所
配当は源泉徴収後の金額が総合取引口座に入金され、明細は「配当金・分配金一覧」で確認できます。ADRの場合はここで「税率」と「管理費用」の両方を見ると、上の違いが分かります。
ADRを持つ人の型 1. 配当利回りを見るときは、本国の源泉税率と管理費用を引いた「手取り」で比較する 2. 英国ADRは源泉税なし=配当目的なら有利。ただし外国税額控除の対象にはならない 3. 無配のADRでも管理費用が徴収される場合がある。ドル残高をゼロにしない 4. 配当明細で税率と費用を毎回確認する
まとめ
- ADRは外国株を裏付けに米国で発行される預託証券。楽天で約100銘柄
- 配当時に1株0.25〜5セント程度の管理費用が差し引かれる
- 源泉税は米国の10%ではなく本国の税率(英国なし・中国10%など)
- 日本の20.315%は共通。租税条約があれば外国税額控除
出典を見る(8件)
- 楽天証券「ADRの基礎知識(1)」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/special/master_adr/master_adr_01.html
- 楽天証券「ADRの基礎知識(2)税金」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/special/master_adr/master_adr_02.html
- 楽天証券「米国株式 手数料」(ADR管理費用) — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/us/stock/commission.html
- 楽天証券「ADR取扱銘柄一覧」 — https://member.rakuten-sec.co.jp/web/foreign/us/lineup/adr.html
- 楽天証券「配当金・分配金について」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/service/dividend/
- PwC Tax Summaries「United Kingdom – Withholding taxes」 — https://taxsummaries.pwc.com/united-kingdom/corporate/withholding-taxes
- SBI証券 FAQ「中国株(H株等)の配当課税」 — https://faq.sbisec.co.jp/answer/5f1559c329ee940011749770
- JETRO「インドの配当課税」 — https://www.jetro.go.jp/world/qa/ND-241201.html
よくある質問
ADRの配当は米国株と同じ10%が引かれますか?
違います。ADRの配当は米国では非課税で、本国の税法による税率で源泉徴収されます。英国は原則源泉なし、中国は10%、インドは10%(日印租税条約)など国によって異なります。日本での20.315%は共通です。
管理費用はいつ引かれますか?
楽天証券の公式案内では、配当支払時に1株あたり0.25〜5セント程度が配当金から差し引かれます。また預託証券を発行する金融機関により、一定期間ごとに管理費用が徴収される場合があります。
外国税額控除は使えますか?
本国と日本の間に租税条約があれば、確定申告で外国税額控除を受けられます。英国のように源泉税がない場合は、そもそも二重課税が発生しないため控除の対象になりません。