つまずき辞典

差金決済楽天証券米国株

差金決済とは?​楽天証券の​米国株で​約10万円が​使えなくなった実体験と​回避法

/ 執筆 アラタ

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何が​起きたか​(2026年8月27日の実体験)

元手17万円で投資を始めた初日のことです。楽天証券の口座に、以前の売却代金(受渡前)として17万円が預り金に入っていました。

その資金でレバレッジ型ETFを約10万円分買い、値動きを見て同じ日のうちに売りました。その直後、アプリに「差金決済取引に該当する」旨の表示が出て、預り金の画面を見ると使える金額が69,158円になっていました。

つまずき 受渡が終わっていない資金で買い、同じ銘柄を同じ日に売った。その結果、売却代金(約10万円)が受渡日まで使えなくなった。

「拘束された」「お金がどこかに消えた」と思って焦りましたが、結論から言えばお金は減っていません。受渡日の朝に戻ってきます。ただ、それを知らなかったせいで、数日分の資金と時間を失いました。

差金決済とは

定義

差金決済とは、現物(株式)を実際に受け渡さず、売買の差額だけを決済すること。たとえば「A株を100万円で買い、同じ日に101万円で売る」を、100万円を用意せず差額の1万円だけで済ませるような取引です。

現物取引でこれをやってしまうと、実質的に「資金を持たずに信用取引をしている」のと同じになるため、法令で禁止されています。

法的​根拠

根拠は、金融商品取引法第161条の2に基づく内閣府令(「金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」)第10条第1項です。要旨は次のとおりです。

顧客が信用取引を行うことを注文と同時に明示しない取引については、対当する売付け又は買付けにより決済する取引を行ってはならない。

つまり、信用取引だと宣言していない(=現物の)注文で、買いと売りをぶつけて差額だけで決済してはいけない、という規制です。

「同一資金・同一銘柄・同一受渡日」の​3条件

楽天証券は米国株式の現物取引についても、この府令を根拠に差金決済を禁止しています。該当するのは、次の3つが揃った売買です。

条件 内容
同一国内受渡日 受渡日が同じ日になる取引どうし
同一資金 同じお金(売却代金)を使い回している
同一銘柄 同じ銘柄の買付→売却→再買付

具体的には、同じ受渡日の売却代金を、同じ銘柄の再買付に使うことができません。また、日計り(その日のうちの買い→売り)の買付代金相当額を、受渡前に出金・振替した場合も差金決済として扱われます。

な​ぜ​「売った代金」が​使えなくなるのか

ここが今回のつまずきの核心でした。

楽天証券の米国株では、円貨決済で売却した代金は、受渡日までは次の買付に使えません。外貨決済(米ドル)で売却した場合は同一受渡日の別銘柄の買付に使えますが、円貨決済はそうではありません。

私は円貨決済で売ったため、売却代金の約10万円は「預り金」としては見えていても、買付余力にも出金余力にも入らない状態になりました。使えるのは、もともと手をつけていなかった69,158円だけ、というわけです。

補足 楽天証券の「買付可能額」画面は日付別(本日/翌営業日/翌々営業日)に表示されます。売却代金は受渡日のタブにだけ現れるので、「本日」のタブが0円でも慌てないでください。

いつ​解除されるのか​(受渡日の数え方)

楽天証券の米国株の受渡日は次のように決まります。

  1. 国内約定日=米国市場で約定した日の翌国内営業日
  2. 国内受渡日=国内約定日から起算して3営業日目(T+2)

私の場合、日本時間8月27日(木)の夜に売却しました。これは米国市場では8月27日(木)の約定なので、

  • 国内約定日:8月28日(金)
  • 国内受渡日:9月1日(火)

となり、売却代金が使えるのは9月1日からです。

なお、米国の証券決済は2024年5月にT+1へ短縮されましたが、楽天証券の国内受渡日はT+2のまま変更されていません。

回避法

回避法 1. 同じ銘柄を同じ日に買い直さない。 日をまたげば受渡日が変わるので該当しません。 2. 円貨決済で売った代金は受渡日まで使えない前提で資金を組む。 当日また買いたいなら、その分は別の資金で。 3. 資金が足りないときは追加入金する。 楽天証券は「らくらく入金」「リアルタイム入金」で即時反映できます。 4. 外貨決済にする。 米ドルで売った代金は、同一受渡日の別銘柄の買付に使えます(同一銘柄の再買付は不可)。 5. 短期の売買は、そもそも現物口座の設計に合わない。 当日に何度も出入りするなら、資金の受渡サイクルがあるサービスを使うか、日をまたぐ前提でトレードを組む。

証券会社ごとの​運用の​違い

同じ法令に基づく規制でも、証券会社によって画面上の扱いが違います。

  • 楽天証券:米国株でも差金決済に該当する注文を制限。売却代金は受渡日まで同一銘柄の再買付に使えない。
  • SBI証券:国内株では「差金決済取引に該当する可能性があります」と表示されるが、売却後同日の同一銘柄買付自体は可能とFAQに記載。
  • マネックス証券:米国株で差金決済に該当する場合は注文を受け付けない。

どの会社を使う場合も、「受渡前の資金で同じ銘柄を同じ日に往復しない」を守れば該当しません。

まとめ

  • 差金決済は現物取引では法令で禁止。根拠は金商法161条の2に基づく内閣府令第10条第1項
  • 楽天証券の米国株では「同一国内受渡日・同一資金・同一銘柄」の売買が該当
  • 円貨決済で売った代金は、受渡日(国内約定日から3営業日目)まで次の買付に使えない
  • お金は消えていない。受渡日の朝に戻る
  • 避けるには「同じ銘柄を同じ日に買い直さない」「資金は受渡ベースで考える」

知っていれば1秒で避けられたことでした。同じところで止まる人が一人でも減れば、この記事の役目は果たせたことになります。

なお、「差金決済取引(CFD)」という名前の商品は、この規制とは別物です。混同しやすいので別記事にまとめました → 「差金決済取引(CFD)」は現物株と何が違うのか

出典を見る(8件)
  1. e-Gov法令検索「金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」第10条 — https://laws.e-gov.go.jp/law/328M50000040075
  2. 楽天証券「米国株式 差金決済取引について」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/us/stock/rule/net_settlement_trade.html
  3. 楽天証券「米国株式 取引ルール(受渡日)」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/us/stock/rule/ground_rules.html
  4. 楽天証券「米国株式 売却代金の買付余力への反映」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/smartphone/us/stock/rule/surfing.html
  5. 楽天証券「国内株式 差金決済について」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/stock/rule/surfing.html
  6. 楽天証券「米国株式の決済期間短縮(T+1)に関するお知らせ」 — https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20240517-02.html
  7. SBI証券 FAQ「差金決済取引に該当する可能性があります」 — https://faq.sbisec.co.jp/answer/5eddef8050df500012206d19/
  8. マネックス証券 FAQ「米国株の差金決済」 — https://faq.monex.co.jp/faq/show/4248?site_domain=default

よくある質問

差金決済に該当すると罰則はありますか?

個人投資家に罰則が科されるものではありません。証券会社側が注文を受け付けない、または売却代金を受渡日まで拘束する形で規制を守っています。

拘束された売却代金はいつ使えるようになりますか?

楽天証券の米国株では、国内約定日(米国市場の約定日の翌国内営業日)から起算して3営業日目が受渡日です。木曜の夜(米国時間木曜)に売った場合、国内約定日は金曜、受渡日は翌週火曜になります。

同じ日に別の銘柄なら買えますか?

楽天証券では、同一資金での「異なる銘柄」への乗り換えは差金決済に当たりません。ただし米国株の円貨決済では売却代金そのものが受渡まで買付余力に戻らないため、別銘柄でも追加の資金が必要になります。